第23章 再出発

ピエール教授はふう、と息を吐き、彼女の前まで歩み寄ると、父親のように肩をぽん、と叩いた。

「海乃。君はF国に逃げ込んで、研究室に引きこもれば、それでやり直しになると思っているのか。違う。君はまだ、何も終わらせていない」

「本当に手放すっていうのは、二度と関わらないことでも、みっともなく逃げることでもない。もう一度あの土地に立って、もう一度あの人間と向き合ったときに、心が一切揺れないことだ。笑って商談できる。どうでもいい通行人みたいに扱える。――それが、放すってことだ」

南坂海乃は顔を上げ、教授の賢明なまなざしに真正面からぶつかった。

「逃げるのは弱者だけだ。南坂海乃、君は弱いのか?」...

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